私達の街、金沢には、藩政期以来、人の手から手に伝えられた職人の技が今日まで受け継がれ、今なお市民生活の中で息づき、伝統的な環境や景観と相俟って、職人の技が独自の文化を形作る街として、日本の数ある都市の中でも、独特の輝きを放っています。中でも、染織工芸については、加賀友禅の名と共に、本市伝統産業の中核をなすものとして、繊細、華麗なデザインと彩りは広く全国かに知られ、京都と並ぶ代表的な産地となっています。

　しかしながら、この金沢の個性そのものと言える伝統的な職人文化としての染織工芸についても、近年の生活様式の近代化、多様化の中で、固定化された狭隘な販路と、新素材・新技術の台頭などにより、伝統的技術の維持保存や需要の確保も困難となることなど、極めて厳しい状況にあります。

　こうした中で、これら金沢の伝統的で高度な職人の技の伝承、保存と後継者の育成は金沢の持つ独自の文化、伝統環境、ひいては日本、世界の中での金沢の個性を守る上で喫緊の課題であり、ここに時代に対応した染織の本質の追求と革新、新たな需要の開拓をはかることを目的に、金沢市染織作家協会を設立しました。

　本作家協会は、金沢在住の染織作家および染織工芸の振興に関心を持つ者をもって組織し、自主的に運営し、現代を志向する自由で創造的な活動を通じ、染織工芸の原点への回帰と変革、新しい伝統の創造と自立を模索することによって、文化、産業としての新しい活力を希求すると共に、併せて、会員相互の親睦と交流を図ることを企図しています。

　関係各位のご理解、ご尽力、そして多大のご支援を得て、本作家協会が健全かつ着実に発展し、金沢固有の生活文化に根ざした本市伝統産業のさらなる発展、振興に寄与できることを念願とするものです。